股関節痛に関する最新の知見
股関節はどんな関節なのか?
関節には「凹凸の法則」というルールがあり、一方が凹の形をしていて、他方が凸の形をしていることが多いです。
股関節は骨盤の凹と{大腿骨|だいたいこつ}と言って太ももの骨の凸で構成される関節です。
また、骨盤の凹の部分がお餅をつく臼のような形をしていて、そこにボールのように丸い大腿骨の頭がはまるような形をしていることから、「**{臼状関節|きゅうじょうかんせつ}**」と呼ばれています。
次に、股関節はどのような方向に動くでしょうか?
たとえば、指の関節は第一関節と第二関節は曲げるか伸ばすかしかできない関節です。
では股関節はどうでしょうか?
臼状関節は前後方向や、開いたり閉じたりもできます。
さらに、太ももを内や外にねじる動作もできます。
このように、股関節はさまざまな方向の運動軸を持っているため、「多軸関節」と呼ばれています。
股関節にある筋肉はこんなにあるの?
股関節に関係する筋肉はどれくらいあると思いますか?
実は23個もあります。
23個というのは、1つの関節に関わる筋肉としてはかなり多いほうです。
では、なぜ股関節に関わる筋肉が多いのでしょうか?
それは、股関節は臼状の関節であり、球状の関節である肩関節に次いで自由に動くことができるからです。
股関節では、複合的な動きが可能です。
これには、関節自体の構造や、関節に関わる筋肉の数や種類が大きな要素となっています。
股関節と筋肉の数を理解するには操り人形を想像してください。
操り人形には糸がついていて、それを引っ張れば人形の手足が動きます。
1つ1つの動きを可能にするには多くの糸が必要とします。
関節で言うと、筋肉が糸にあたります。
さまざまな方向から関わる筋肉の数が多ければ多いほど、関節では細かい運動が可能となるわけです。
股関節は骨盤や腰と連動している!?
人の体は1つの関節だけで動いているわけではなく、複数の関節の連動にによって成り立っています。
たとえば、ラジオ体操で腰に手をあてて体を運動がありますが、腰を反るためには、頭や首を後ろに曲げ、そのあとに、胸や腰を反らしていきます。
あなたも試してみてください。
頭や首を後ろに曲げないと胸や腰を反らすことはできません。
このように、運動には連鎖する流れがあり、これを「運動連鎖」と呼びます。
股関節ではどうでしょうか?
股関節の運動は骨盤と腰椎(腰の背骨)に連鎖します。
仰向けに寝た状態で股関節を曲げると、最初は股関節だけが動きますが、途中から骨盤が後ろに傾く動きが加わってきます。
さらに、股関節曲げていくと、今度は腰椎を曲がる動きが出現します。
大腿骨から骨盤へ、骨盤から腰椎へ、運動が連鎖していくのです。
このように、通常は運動連鎖が行われます。
しかし、股関節や骨盤などに問題があると、適切に運動連鎖しながら動くことができません。
運動連鎖ができないと、立ち上がりや歩くときに股関節と骨盤、腰椎が調和の取れた運動ができません。
これにより、普段の生活で股関節に負担がかかり、痛みがでてしまう要因となってしまうのです。
股関節にはこんなにも負担がかかってるの!?
人の体でいちばん重いのは、体幹と呼ばれる胴体部分です。
全体重の約48%を占めており、2番目に重いのは足です。
両足を足すと体重の約35%になります。
単純に考えると股関節には、股関節より上部にある頭や体幹、両腕の重みがかかります。
立位姿勢では、片方の股関節に体重の30〜40%の負担が股関節にかかります。
さらに、片足立ちになると、股関節にはどれくらい負担がかかるでしょう?
答えはなんと体重の3倍になります。
「なぜ、体重以上の負担が股関節にかかるの?」と思われた人もいるかもしれません。
少し難しい話になりますが、できるだけ簡単に説明します。
左足を上げ右足で片足立ちになったとします。
左足を上げると、まず左足の重みが右股関節に加わります。
そして、骨盤の左側は左足の支えがなくなるので、骨盤は左側に傾こうとします。
これを止めるために右側の股関節周囲の筋肉は、骨盤の左側を引っ張り上げようとします。
この引っ張り上げようとする力は、右股関節を押し付けるように働いてしまい、左側の骨盤が落ちる力と引っ張り上げる力、その両方が右の股関節の負担となってしまうのです。
体重が60㎏の方なら200㎏近くの負担が片方の股関節にかかるのです。
レントゲンで股関節痛の原因はわからない!?
レントゲンやMRIといった画像所見は、軟骨や骨のコンディション状態を調べる検査です。
しかし、股関節にある軟骨には痛みを感じる神経は存在しません。
研究によると、レントゲンにより変形性股関節症と診断された患者さんの内、股関節に痛みをある患者さんは約20%だったことが明らかになりました。
なぜ、レントゲンなどの画像所見では変形性股関節症が存在するのに、症状が出現する人としない人がみられるのでしょうか?
それは、レントゲンやMRIなどの画像所見で確認できる軟骨や骨だけが痛みの原因にはならないということです。
股関節の痛みの解決方法はあるの?
股関節痛は股関節の骨の構造上の問題と筋肉に負担がかかってしまうことで、炎症や筋肉に痛みが生じるから引き起こされます。
これらの解決策としては、
①炎症が強い場合は、アイシングといって患部を冷やすことや、注射や薬などの薬物療法により炎症を抑制させる
②股関節内の炎症や股関節周りの筋肉痛の双方に言えることは、股関節を動かしたときに関節に負担をかけないような体になる
③骨の構造上に問題が著しい場合は、人工骨頭置換術といって股関節を人工の骨に置き換える手術を行う
①の影響が強い場合は、股関節に負担をかけないようにある程度安静にし、アイシングや薬物療法を行えば軽減してくるはずです。
②の解決方法が、いちばん重要だと思っています。
股関節の痛みの原因は体の中にあり、それを見つけることが根本解決につながってきます。
③に関しては、誰しもがやらなくて済むならしたくないでしょう。
手術をすれば、およそ2か月程度の入院を必要とします。
さらに、人工関節の耐用年数は15〜20年といわれています。
そのため、手術をした年齢によっては、再度手術をする人もおられます。
もちろん、股関節痛の改善には手術しか該当しない人もいます。
しかし、①や②の解決方法を試してみて、それでもどうにもならないときの「最後の手段」として、考えていただければと思います。
現に私の治療院では病院で「手術しかない」と宣告された患者さんの股関節痛も適切なケアをすることにより改善することも多くあるからです。